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新人☆あの。ライバル排除の話は、
   なんか生生しすぎてコワイです。
   あたしはまだ、その域まで行ってませんし


   だから芸能界の基本から行きたいんですけど・・



あゆ★そうだね。どこから話そうかなあ・・
   まず、歌の世界の仕組みからだね 



新人☆そうですね。そこからお願いします。
   勉強になります



あゆ★あのね。歌の世界って、基本的に一人勝ちの世界なんだよね。
   CDみたいなソフト商売って、他の世界とちがって、
   何百万枚も同じのが作れちゃうんだから、
   いったんひとつのものに満足しちゃえば、
   消費者は、ほかは必要ないの。他は、排除されちゃうの。
   特に、一人勝ちと似たような内容で、
   ほんの少しだけでも、”オリジナル”に劣っているものはね。



新人☆ふうん。



あゆ★運転手とか、ドカタの人件費の手間って、
   CDみたいにコピーできないでしょ
   基本的に、規模が大きくなるにつれ、人数が必要でしょ。
   しかも、能力の劣った労働者、
   たとえば平均の半分しかできない人でも
   排除されることはなくて、、
   最低でも、平均の半分の給料はもらうことができるでしょ。


   だけどCD、映画とか、ソフト商売にはそれがないの、
   たとえ作ってる人、出てる人の体がひとつでも
   DVDとかCDって、いくらでも出来ちゃう。
   一万枚つくるも、百万枚作るも、手間は同じ。
   同時に多人数が同じCD聞いたりDVD見たりできるの
   限界がないってことだよね。
   いわば、限界のない
   バーチャル同時舞台、コンサートみたいなものかな。
   本とかの出版物、パソコンソフトと同じ。
   だから二番手は排除されやすい。


   それに同じ芸能の世界でも、違う分野はあるよ
   たとえば舞台役者とかだったら
   いくら人気者だからって、体はひとつしかないんだから、
   同時に二つの舞台には立てないでしょ。
   だから限界がある。コンサートもおなじかも。


   これって、近代まで、例のなかったことなの。
   市川団十郎がいくら人気だっていっても、
   彼を生で見ることしか、
   彼の芸に接することが出来なかった江戸時代の人たちは、
   他の二流役者で妥協することもあったのね。
   だから、団十郎には及ばない二流の役者たちも、
   市川団十郎などの一流に排除されずに
   それなりの雇用を得ていたんだよ。


   
新人☆ううん。よくわからないけど・・
   昔の役者さんって、手間商売だから
   結局、農民、労働者さんとかと同じく、
   人数がたくさんいる意義があったってことですか?



あゆ★よくわかってるじゃない。そのとおりだよ。
   だけど、近代になって、エジソンなどの発明によって
   それが変化してきた・・・ってこと。



新人☆それが、レコード、映画みたいな
   ソフトってことですね。すこしわかってきました。
   芸能が、他の手間労働と、根本的に変わってしまった・・



あゆ★だね。エジソンとかの特許商売も同じだね。
   ”成功者たった一人の総どり”これも同じこと。
   彼の影には、同じ苦労、あるいは
   彼以上の苦労をしたにもかかわらず、競争に敗れて
   一ドルももらえなかった人たちがたくさんいるんだよ。
   特許申請が三時間遅れたとか、それだけで一円ももらえない。
   二番手もどん尻も同じってこと。
   だけど一番手になったときの儲けがでかいんで、
   競争に参加する人は引きも切らないんだけどね。


   特許、CD、映画、ソフト商売はみんな同じだよ。
   急激な技術革新だってそう 
   すごい発明で、1000人単位の首が吹っ飛んじゃう。
   ベンチャービジネスも同じかな。



新人☆ううん。シビアなんですね。あたしたちって
  そんな世界に生きてるんだ・・なんか大変そうですね。



あゆ★次に続くよ。